東南アジア・南アジア地域の地表水重金属汚染と影響の実態把握

バングラデシュやベトナムでは,1990年代頃より,顕著な地下水の重金属汚染が確認されています.特にヒ素汚染については深刻であり,村落住民が生活用水として利用する井戸水からヒ素が検出されており,このヒ素汚染水を長年引用することにより,重大な健康被害が多数確認されています.
これらの地下水ヒ素汚染の要因としては,バングラデシュではヒマラヤ山脈の地下水からの流出,ベトナム紅河デルタでは地質年代が異なる地層地下水位の不均衡等が報告されており,これらは自然由来のヒ素汚染と考えられます.
一方で,バングラデシュやベトナムなどの途上国においても,都市開発や工業団地開発が進行しており,これらの開発に伴う汚濁排水の河川への流出や,汚濁排水の処理施設不足などを要因とした人為的な水環境の重金属汚染も進行しています.
重金属汚染については,ヒトが持続的に引用することによる健康被害に関する研究報告は多数ありますが,重金属汚染水の地表水としての挙動や,灌漑用水として利用された場合の農作物への影響などについては,未解明な部分が多いです.
本研究では,地表水として流れる重金属汚染水の地理的・地形的蓄積特性の解明や,重金属汚染水が灌漑用水として利用された場合の農作物内蓄積特性について検討しています.

ベトナム紅河デルタの重金属汚染マップ